内藤が超名曲の常識を斬る‼
Correcting big mistakes in famous pieces


シベリウス交響曲第2番

指揮者の方のご参考までに
極めて重要かつ滑稽な無数の過ち例の一部を告発する!

  前項までに何度も触れたように、この曲中に頻繁に書かれている松葉dim.の90%以上は>のことである。
 まずこの事実を前提として話を進めよう。
1楽章①;13と21(小節という語は略す)のOb,Clの松葉dim.は>。他のパートも同様箇所はすべて同じ。16のHrの松葉dim.は>、そして次の小節になって記載されている通りdim.が始まる。同様箇所はすべて同じ。49,50のVnの松葉dim.はそれぞれ>。66のFgの2つの松葉dim.は>。101のFg,Tuba,Cbの松葉dim.は>(当然であろう、こんなに他パートがffで盛り上がっているところでdim.なんて滑稽至極で有り得ない)109,110のTr,Hrの松葉dim.は>。114~116の弦楽器は5拍目に松葉dim.が書かれているが、これも典型的な過ちである。シベリウスは4拍目に>を書く時には、素人が見ると必ず5拍目と見間違えるところに>を書く、これが彼独特で例外なき書き癖であることをプロの写譜師ならば知っていなければならないはずなんだが‼138Vcの松葉dim.は、本当のdim.ではなくそのアウフタクトの最初の音符に付けられた>のことで、こういうケースでは、彼は必ずこのような書き方をする。149,150,152~154の弦楽器の松葉dim.は、どれも1拍目の>のことで、自筆譜をそのまま実写すると印刷どおりになるが、これも彼の典型的書き癖で、彼は1拍目に>を書く時は、すべての曲のすべての箇所でこのように書く。157,159の弦楽器とTimの松葉dim.は>。194のTr,Trbの松葉dim.は>。238,239,249の松葉dim.も全て>。251,254で2つ連続の松葉dim.が書かれているパートはすべて>が2つである。261,262,266,267,268これらの松葉dim.もすべて>。
以下同様。
2楽章;①58,61,63,68,70~73,75すべて>。次の記載は極めて重要な過ちである。85,90,92,167,171,172は、出版譜(出典はBreitkopf社)には全音符の冒頭から松葉dim.に従い約2拍分徐々に弱くし、pあるいはmpになってから後半に約2拍分かけて松葉cresc.するように書かれており、ほとんどすべての指揮者がその通り忠実に演奏している。
 しかし、哀れにもその律儀なシベリウスへの忠誠 ?! は、彼が天国で聴けば大いに嘆くであろう大間違いであった!。すなわち出版譜上の全音符の最初に付けられた松葉dim.はすべて誤りで、これらは全て>である! 要するに彼は、f又はffで始まる全音符の冒頭に彼独特の書き癖(ここでは2拍分に亘る横長の形状)で“>”を書き、そのすぐ後にpないしはmp を subito pの意味で書いたのである。そして次小節のfまたはffに向け,すぐに松葉cresc.が始まるのである(すなわち1拍目の裏拍ぐらいからか?)。
 今までおそらくすべての指揮者が採ってきた、譜面上で約2拍分松葉dim.し、3拍目ぐらいから約2拍分松葉cresc.するという方法は、彼の記譜の癖を知らないがための滑稽極まりない過ちである。たまたま彼の>の形状が2拍分ぐらい横長であったがため、subito pや松葉cresc.が3拍目近辺にしか書けなかっただけのことである。しかもその癖を知らない写譜師がそのダイナミクスの書き位置を、はっきりと確信持って間違った箇所に書いてしまったため、後のすべての指揮者に考える余地すら与えなかったとも言える。彼のすべての曲に出てくる典型的な書き癖の邪悪ないたずらである。気が付かない方も悪い!
 このように彼の書き癖さえ知っていれば容易に判断できる冗談のような滑稽な過ちを、世紀の巨匠指揮者たちは検討することなく百年以上信じ続け、吟味する重要性を忘れ去ってしまっていたのである。個々のケースを吟味してみよう。
 85はffで>し、すぐにsubito mpした後cresc.である。90はfで>し、すぐにsubito p、92はffで>した後、pやmpが書いてない故、他の箇所ほどは弱くならずにcresc.し、fffzに至る。以下も同様である。163は>。164はFg,Vc,Cbの松葉dim.は間違いで、そのアウフタクトのソ♭に>が、他のパートはどれも松葉dim.ではなく>
以下類似箇所は同様な修正が必須であり、指揮者は個々に記した例に倣ってすべてを修正して演奏することが、指揮者として当然の義務であり、必須要件である。どの曲の自筆譜でもよい故、どこかで手に入れて私の言うような疑いを持ちながら精査してみれば、今までうやむやだったシベリウスの譜面の謎が晴れ、頭の中が極めてクリヤーになるであろう。
 別表に、私がフィンランドのオーケストラを指揮した際、【フィンランディア】と共に彼らの十八番のこの曲中に存在する無数の誤りを、ずうずうしくも(彼らからは大感謝されたが)修正してもらうために作成した、交響曲2番の正誤表【表-2】を載せた。指揮者の方々の参考になれば幸いである。
 ダメ押しとしてもう1か所だけ典型例を挙げておく。フィンランディア(62,63小節)の項でも述べたが、235と243のように前小節から次の小節にタイで結ばれた長い音符が書かれているときに、結ばれた次の小節に松葉dim.が書かれている場合、またはこの小節のように小節線をまたぐ少し前ごろから松葉dim.が始まる書き方がしてある場合は、99%松葉dim.ではなく、前小節に書かれた長いタイの始まりの音符に>を付けることを意味している。
 例外のない、彼のどの曲にも通じる典型的書き癖である。彼はそのように事情が分からない人にはとても理解のできない書き方をするのである。しかしひとたびその癖を知ってしまえば、いとも簡単に正しい譜面を導き出すことが出来る。
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